公民館・図書館の官民連携/デジタル活用事例

デジタルで地域の研究者を子どもたちに繋ぐ「つくばSTEAMコンパス」(茨城県つくば市)

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「科学の街」つくば市で生まれた「つくばSTEAMコンパス」
茨城県つくば市は、日本有数の研究学園都市。市内には150に及ぶ官民の研究機関に2万人もの研究従事者が集まっており、市民の科学技術に対する関心も高い。そんなつくば市で、地域の子どもたちと研究者を繋ぎ、学びの場を提供するために生まれたのが「つくばSTEAMコンパス」だ。
 
「つくばSTEAMコンパス」Webサイト       
「つくばSTEAMコンパス」Webサイト

子どもたちがいつでも研究者に質問できる「なぜなぜなぜ」

「つくばSTEAMコンパス」のコンテンツのひとつ「なぜなぜなぜ」では、子どもたちが「なぜ?」と疑問に思ったことを日常的に研究者に質問することができる。子どもたちからは「紙飛行機を飛ばすにはどのように空気の流れを活かせばいいの?」など様々な質問が集まり、研究者が子ども向けの言葉で回答している。「なぜなぜなぜ」のおかげで、従来のように研究者が発信した情報を受け取るだけでなく、子どもたちから研究者に質問を投げかけ、能動的に学びを深められる環境が整っている。
子どもたちと研究者との双方向コミュニケーションは、学校の授業でも行われている。探究の授業では、子どもたちが授業時間の合間も含めて継続的に研究者とやり取りができるよう、Microsoft Teamsのチャット機能を活用している。研究者とのやりとりを通して、さらに学びを深めたり、科学的思考に触れたりする機会が提供されている。
 
「なぜなぜなぜ」に寄せられた質問と回答1 
「なぜなぜなぜ」に寄せられた質問と回答2      
「なぜなぜなぜ」に寄せられた質問と回答

地域の研究者や科学イベントが一目で見つかるプラットフォーム

さらに学びを深めたい子どもたちが研究者や研究機関を直接訪問できるよう、「つくばSTEAMコンパス」では、市内の研究者情報や研究機関主催のイベント情報を収集・一元化して配信している。このような情報は、これまで各機関のWebサイトでバラバラに発信されており、子どもたちやその保護者が情報にアクセスするには、複数のサイトを訪れて確認する必要があった。「つくばSTEAMコンパス」に様々な情報が集まるようになったことで、子どもたちの学びを継続するためのリソースに、より簡単にアクセスできるようになった。
 
「研究者にであう」では、専門分野を子ども向けの言葉で紹介       
「研究者にであう」では、専門分野を子ども向けの言葉で紹介
出所)つくばSTEAMコンパスWebサイト

イベントや授業は、デジタルとリアルの双方で開催

「つくばSTEAMコンパス」では、オンラインと対面の双方でイベントを行っている。
コロナ禍の令和2年3月には「つくばこどもクエスチョンオンライン」が開催された。学校の休校期間を活用して子どもたちの自由研究を支援するイベントで、わからないことは「なぜなぜなぜ」と同じように研究者に質問すると、研究者がYouTubeライブで回答してくれる。イベント期間中の1週間で、全国から11,215件のアクセスがあったという。
他方、学校での対面授業も実施している。対面では、研究者が直接子どもたちの様子を見てまわりながら、学びをサポートすることができる。ある学校での授業後には、児童の8割が「研究者になりたい」と答えたという。
いつでもどこでも科学に触れられるオンラインならではの手軽さと、生で科学に触れられる対面ならではの体験の深さの両方を活かし、効果的なSTEAM教育を提供している。
 
「研究者にであう」では、専門分野を子ども向けの言葉で紹介       
「つくばこどもクエスチョンオンライン」:子どもたちの質問に研究者が回答
出所)つくば市公式YouTube

取組のポイント:地域資源を輝かせるためにデジタルをどのように活用するか

「つくばSTEAMコンパス」は、地域の資源である研究者や研究機関を、デジタルを活用して子どもたちと繋ぎ、新たな社会教育の場を創出している。このように、デジタル活用によって、これまではアプローチできていなかった地域資源を新たに発掘して行政としてストックし、それらを社会教育や学校教育に役立てる本事例は、社会教育の新たなスタイルとして他自治体にとっても大いに参考になる。
つくば市の場合、本事業を委託していた事業者の人脈を足掛かりに、1人の研究者がまた別の研究者を呼ぶ形で協力者を集めた。協力者は、子どもたちに科学のおもしろさを伝えることに楽しみややりがいを見出しており、子どもたちと直接コミュニケーションが取れる本取組は、このような価値観をもった研究者と親和性が高い。現在では、協力者の研究分野の幅を広げるためにも、市内各機関の広報部門等を経由して協力を依頼している。
また、協力いただく研究者の知見を最大限活かすには、デジタルツールで研究者と子どもたちを繋ぐことに加えて、研究者の言葉を子どもたちに楽しみながら理解してもらえるよう橋渡しする存在が必要不可欠だ。つくば市では、「つくばSTEAMコンパス」の立ち上げを担う事業者として、デジタル活用やWebデザインのノウハウに加えて、研究者の知見を市民に楽しく学んでもらえるようなイベントを企画・運営するノウハウを持った事業者を選定した。また、学校の授業と連携した取組を強化する際には、教育に関する専門性を持った事業者を選定し、教育の質を高めた。
このように、目的に応じた一工夫をすることが、デジタル活用によって地域資源をさらに効果的に活かす秘訣となっている。
 
本事例の詳細は、こちらをご覧ください。
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