公民館・図書館の官民連携/デジタル活用事例

図書館+都市公園の一体的な官民連携、江坂図書館(大阪府吹田市)

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図書館のコンセプトは「ビジネス・子育て・園芸」

吹田市は市内に9つの図書館と1分室があるが、その一館一館に立地地域の特性などを踏まえたコンセプトがある。ここ江坂図書館のコンセプトは①ビジネス・②子育て・③園芸だ。
巨大なビジネス街の梅田からわずか10数分という好立地の大阪メトロ江坂駅、そこから直結する江坂公園は、朝夕は大量の通勤客が行き交う。これが「ビジネス」の背景だ。逆に昼間は、都会の数少ない憩いの場として、子ども連れの親子で賑わっているのが「子育て」のゆえん。そして「園芸」は、かつて併設されていた「江坂花とみどりの情報センター」が廃止され図書館スペースが拡張されたが、都会の中でみどりの大切さを引き続き伝えていこうという思いの表れだという。
図書館と都市公園を一体的に官民連携事業で整備するという全国でも新しい取組の背景には、こうした地域の特徴や歴史的経緯があることが見逃せない。

 
江坂公園全体図
 
 

既存図書館の拡張・設備拡充

こうしたコンセプトを具現化させたのが、令和5年のPark-PFIを通じた施設リニューアルである。単なる書架の拡充にとどまらず、授乳室や二階ロフトの閲覧スペースといった新たな機能も整備されている。さらには、公園中央の児童が遊ぶ広場からもガラス越しに書架が良く見える開放感のあるレイアウトにより、図書館と公園の一体感が一層高められている。


https://esaka-park.jp/renewal/library
 
図書館の写真
図書館の写真2
 

Park-PFI活用で都市公園と図書館を一体整備

平成29年の都市公園法改正により、民間企業等に対して都市公園内に収益施設(公募対象公園施設)の設置・管理を認める代わりに、公園施設(特定公園施設)整備への協力も約束させる、いわゆるPark-PFI制度(公募設置管理制度)が導入された。これにより、全国各地の都市公園内にカフェや物販店舗といった民間収益施設(公募対象公園施設)が設置され公園利用者の利便性を向上させるとともに、その利益を先行的に還元する形で芝生広場や園路、公衆トイレといった公共施設も民間資金で整備されてきた。
江坂公園のPark-PFIでは、民間収益施設として複数の飲食店舗が設置され、公共施設としては江坂図書館などが位置づけられている。Park-PFI事業者は、公園全体の整備や、運営・維持管理(指定管理者としても指定)とともに、図書館の改修と運営・維持管理を一体的に担う。
その効果は、既に維持管理面で発揮されている。現在のPark-PFI事業者は公園と図書館の設備管理や市民サービス窓口を担当する職員を一体的に配置しており、これによって以前は開館前の一日一回だった図書館のトイレ掃除が、今は汚れの発生に応じて日中も行われるようになり、常に清潔な状態が保たれているという。加えて、公園・図書館の担当人員共通化により、常に窓口に公園・図書館双方の用件に対応可能な人がいる状況は対市民サービスという面でも好評だ。今後は、公園と図書館の両方を一体的に使用したイベント開催など、さらなる連携も期待されている。

 図書館のレファレンス業務などは引き続き市職員が担うメリハリ

近年の自治体では財政のひっ迫により図書館司書の外部委託や非正規雇用(会計年度任用職員)化が進むが、吹田市では現在も図書館司書としての市職員の採用枠を維持している。江坂図書館の運営・維持管理業務も一程度はPark-PFI事業者兼・指定管理者が行うものの、専門性が必要な調査相談(レファレンス)業務、蔵書の選定・除籍業務、小学校などとの外部連携業務(アウトリーチ)などは司書資格をもつ吹田市職員が担うことで、公共の図書館としてのサービス向上も目指している。
公園と図書館の一体的な運営・維持管理という革新的な事業が実現した背景には、このように効率化とサービス向上の「二兎を追う」ための官民の役割分担があることを見逃してはならない。


江坂図書館館内
 

本事例の詳細は、こちらをご覧ください。

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