公民館・図書館の官民連携/デジタル活用事例

デジタル活用で県民が等しく情報にアクセスできる仕組みづくり 「デジとしょ信州」「信州デジタルコモンズ」(長野県)

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日本で2番目に自治体数の多い長野県

豊かな山々に抱かれて各地域が独自の文化を育んできた長野県。77の市町村があり村の数は全国1位。規模が小さい自治体も多く、条例設置の図書館がない自治体が26%、書店のない自治体が52%と、読書環境には地域差がある。このような状況の中、市町村と県が協働し、すべての県民が等しく情報にアクセスできる環境をつくるための手段として、デジタル活用を始めることとなった。
 

いつでもどこでも電子図書が読める「デジとしょ信州」

デジタルを活用した取組のひとつが、電子図書館「デジとしょ信州」だ。電子書籍をいつでもどこでも無償で借りられるオンラインサービスで、利用者は一度に2冊まで、最大7日間電子書籍を借りられる。従来の図書館同様、同じ書籍を同時に借りられるのは原則として一人までで、借りたい本が貸出中の場合は予約ができる。ただし、児童生徒向け書籍の中には、複数人が借りられる同時アクセスモデルのパッケージもあり、学校の授業でクラスの全員が同じ電子書籍を読みながら学習するといった、紙の本では困難な新しい使い方が可能となっている。また、電子図書館のコンテンツとしては、市販の書籍に加えて、市町村が著作権を持つ郷土の学びの副読本等、オリジナルのコンテンツを電子書籍として登録することも可能となっている。
「デジとしょ信州」:トップページではおすすめの書籍を紹介       
「デジとしょ信州」:トップページではおすすめの書籍を紹介
出所)「デジとしょ信州」

貴重な資料をオンラインで見られる「信州デジタルコモンズ」

「信州デジタルコモンズ」は、古文書、美術品、考古資料、写真、映像などをデジタルアーカイブとして提供するサービスだ。貸出や公開が難しかった貴重な資料を、オンラインで好きな縮尺に拡大しながら細部まで見て楽しむことができる。現在、5,180点のコンテンツがあり、そのうち4,501点は二次利用も可能となっている。県立の文化施設が所蔵するもの以外に、市町村の文化施設や社会教育施設、地域コミュニティが所有するものも対象としている。

 
「信州デジタルコモンズ」:資料は高画質で拡大・縮小可能。解説も記載されている       
「信州デジタルコモンズ」:資料は高画質で拡大・縮小可能。解説も記載されている
出所)信州デジタルコモンズ

デジタルで実現する誰一人取り残さない図書館サービス

電子図書館「デジとしょ信州」は、従来からの図書館利用者に加えて、これまでサービスを利用しにくかった層の県民に対しても、より便利に読書を楽しめる環境を提供している。年代別の利用動向では、30~60代の働く世代による20~21時台の利用が多く、従来の図書館の開館時間中には利用が難しかった層に図書館サービスを届けることができている。学校との連携も進み、10代が7~8時台、13時台に多く活用するようになってきた。また、電子書籍の特徴を生かした読書バリアフリーの実現にも期待が大きい。視覚の障害者手帳を持つ方向けに「アクセシブルライブラリー」という音声自動読み上げサービスがあり、利用の機会が拡大しつつある。さらに、紙媒体では在庫切れとなりがちで入手困難な外国語の書籍も電子書籍では入手できるものが多く、海外からの移住者など、外国にルーツを持つ方向けに母国語の書籍を取り揃えることができる。

電子図書館運営のポイント:すべての市町村と県が主体的に連携

「デジとしょ信州」では、導入の検討段階から現在の運営に至るまで、長野県内のすべての自治体が協働して行っている。小規模な自治体の多い長野県では、予算面や運営面での負担の大きさから、単独では電子図書館導入が難しい自治体も多かった。そこで、すべての市町村と県からなる検討ワーキンググループを長野県先端技術推進協議会の下に設置し、準備を進めた。このワーキンググループは、これまで図書館設置のなかった自治体も参加できるよう、既存の図書館間連携の仕組みとは別に新たに設置したものだ。
ワーキンググループでは、各自治体から参画した職員が、利用登録、選書、利用者支援など検討項目ごとのチームを作り、運営方法や自治体間での役割分担等の議論を進めた。特徴的なのは、選書の仕組みだ。長野県では、コンテンツ費用負担は自治体の規模によって傾斜を掛けているが(均等割10%、人口割90%)、選書は各自治体の権利であり、平等に行うこととしており、全ての自治体が運営に主体的に関わることができる仕組みとなっている。サービス開始後も、各自治体が各々の課題解決に向けて工夫を凝らした取組を行っており、そのノウハウ共有も盛んに行われている。
 
デジとしょ信州概念図       
デジとしょ信州概念図
出所)市町村と県による協働電子図書館運営委員会


本事例の詳細は、こちらをご覧ください。

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