古代の歴史が息づく街、大網白里市ならではの展示ニーズ
千葉県中部の九十九里浜近くに位置する大網白里市。今から2万年から3万年前の旧石器時代から人々が暮らしており、その遺跡が数多く存在している。遺跡から出土した土器や丸木船などの貴重資料が豊富にあるものの、市内には博物館等の展示施設がなく、一般に公開される機会はほとんどなかった。このような状況を受け、地元の郷土史研究会などの市民に加えて、歴史的な資料を保有する地元寺社などからも、長年にわたって施設整備を求める声が上がっていた。これが「大網白里市デジタル博物館」開館の背景となっている。
デジタル博物館であれば整備費が抑えられるだけでなく、これまでの収蔵品などのアーカイブ化さえ完了すればすぐに市民の目に触れるようにできることも大きなメリットだ。
「大網白里市デジタル博物館」トップページ
(出所:大網白里市デジタル博物館)
デジタル博物館であれば整備費が抑えられるだけでなく、これまでの収蔵品などのアーカイブ化さえ完了すればすぐに市民の目に触れるようにできることも大きなメリットだ。


(出所:大網白里市デジタル博物館)
手に取っているかのように資料を見られる「大網白里市デジタル博物館」
「大網白里市デジタル博物館」は、デジタルアーカイブの技術を活用したオンライン上の博物館だ。博物館法上に位置付けされた「登録博物館」として、令和6年3月29日付けで千葉県教育委員会の認定を受けており、常設の展示施設を持たず、インターネットを中心に資料を公開している機関としては、全国初の事例となっている。
「縄文」「中世」などの年代や「いわし文化」「絵馬」などのテーマに合わせて、土器や絵画、写真などの資料がキュレーションされており、解説も充実している。土器などの立体物は3Dでアーカイブされているものもあり、土器の内側や裏側まで、まるで実物を手に取っているかのように角度を自分で自由自在に変えながら細部まで見ることができる。
このような魅力が伝わって、デジタル博物館の閲覧数は、月平均21,000件(2023年度平均)を誇っている。これは大網白里市が運営するWebサイトの中でも随一の数字であり、市役所内でも「デジタル博物館」の存在感は高まっている。これまでは市の収蔵庫や地元寺社の奥に保管されていて気軽に見ることができなかった地域の歴史的資源を、個人が都合の良い日時に都合の良い場所で閲覧できるようになったことを高く評価する声も地域の内外からは聞こえる。
「縄文」「中世」などの年代や「いわし文化」「絵馬」などのテーマに合わせて、土器や絵画、写真などの資料がキュレーションされており、解説も充実している。土器などの立体物は3Dでアーカイブされているものもあり、土器の内側や裏側まで、まるで実物を手に取っているかのように角度を自分で自由自在に変えながら細部まで見ることができる。
このような魅力が伝わって、デジタル博物館の閲覧数は、月平均21,000件(2023年度平均)を誇っている。これは大網白里市が運営するWebサイトの中でも随一の数字であり、市役所内でも「デジタル博物館」の存在感は高まっている。これまでは市の収蔵庫や地元寺社の奥に保管されていて気軽に見ることができなかった地域の歴史的資源を、個人が都合の良い日時に都合の良い場所で閲覧できるようになったことを高く評価する声も地域の内外からは聞こえる。


3Dでアーカイブされた資料は、角度を自由自在に変えながら見ることができる
(出所:大網白里市デジタル博物館)
(出所:大網白里市デジタル博物館)
デジタル博物館の運営に必要な発想
デジタル博物館の特徴は、その展示の自由度・柔軟性にある。スペースの制約なく展示ができることはもちろん、企画展や特集などを柔軟に実施可能なこと、他の施設に所蔵されている美術品や資料も含めてキュレーションして展示できることなども、実際にデジタル博物館を運営したからこそ感じるメリットだ。
他方、博物館の新規建設には遠く及ばないが、デジタル博物館にも一定の人材と予算の確保が必要なのも事実だ。人材としては、市役所のデジタル部署との連携・協力が重要であり、教育委員会側ではデジタル技術への素養というよりむしろ、歴史的文物への知見や学芸員の資格を持つ人間がアーカイブ化等の技術を新たに学んで対応することが重要だという。特に開館時には、大量の収蔵品を一度にアーカイブ化する必要があるため、体制を増強して臨んだこともある。
予算確保に際しても、柔軟な発想で臨んでいる。行政側の財源だけでなく、クラウドファンディングやふるさと納税なども積極的に活用しており、2022年度には「デジタル博物館×小学校教育 考古資料の教材化プロジェクト」としてクラウドファンディングを募ったこともある。
絵馬の展示ページ:地元の稲生神社所蔵の一般公開されていない絵馬を展示
(出所:大網白里市デジタル博物館)
他方、博物館の新規建設には遠く及ばないが、デジタル博物館にも一定の人材と予算の確保が必要なのも事実だ。人材としては、市役所のデジタル部署との連携・協力が重要であり、教育委員会側ではデジタル技術への素養というよりむしろ、歴史的文物への知見や学芸員の資格を持つ人間がアーカイブ化等の技術を新たに学んで対応することが重要だという。特に開館時には、大量の収蔵品を一度にアーカイブ化する必要があるため、体制を増強して臨んだこともある。
予算確保に際しても、柔軟な発想で臨んでいる。行政側の財源だけでなく、クラウドファンディングやふるさと納税なども積極的に活用しており、2022年度には「デジタル博物館×小学校教育 考古資料の教材化プロジェクト」としてクラウドファンディングを募ったこともある。

(出所:大網白里市デジタル博物館)
リアルでの出前講座も実施
「大網白里市デジタル博物館」では、デジタルでの展示だけでなく、対面での出前講座も行っている。小学校5, 6年生の社会科の授業では、縄文時代を学習するタイミングでデジタル博物館の学芸員が出張して講座を実施。デジタル博物館で資料を見てみることに加えて、実物の土器や石器も観察することができる授業となっている。教科書に載っているような土器が自分の住んでいる地域からも出土していることを知った子どもたちからは、毎回歓声が上がるという。
また、市民を対象とした出前講座も行っている。出前講座では、手持ちのスマホなどでデジタル博物館にアクセスしてもらいながら実物の資料も見せることで、参加者の理解が深まることに加え、帰宅後にデジタル博物館に再度アクセスしてくれることにもつながる。
このように「大網白里市デジタル博物館」は、デジタルにリアルを組み合わせた新たな社会教育施設の在り方を体現している。
また、市民を対象とした出前講座も行っている。出前講座では、手持ちのスマホなどでデジタル博物館にアクセスしてもらいながら実物の資料も見せることで、参加者の理解が深まることに加え、帰宅後にデジタル博物館に再度アクセスしてくれることにもつながる。
このように「大網白里市デジタル博物館」は、デジタルにリアルを組み合わせた新たな社会教育施設の在り方を体現している。
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