公民館・図書館の官民連携/デジタル活用事例

図書館・美術館・都市公園の複合開発PFI、まなびあテラス(山形県東根市)

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「集い、学び、創造する 情報と芸術文化の交流拠点」が基本理念

全景       
(写真:全景)

まなびあテラスは、果樹の名産地として名高い山形県東根市に立地する、図書館・美術館・市民活動支援センター・都市公園・カフェ等を複合した文化施設である。
施設整備以前の東根市では図書館はあったものの、市の人口規模に対して蔵書数は少なく、また美術館やギャラリーなどの芸術文化施設は整備されていなかった。市民からは芸術文化環境の整備や芸術の発表・団体交流の場が求められており、図書館、美術館(市民ギャラリー)、市民活動支援センター・都市公園からなる複合施設の整備に至った。
多様な公共施設が複合化されているため、子どもが図書館を利用している間に保護者が美術館を利用したり、イベント実施時に各施設の機能を連携して活用したりと、複合施設ならではの市民利用がなされている。

PFI事業推進にあたっての課題

同市では、消防庁舎・学校給食センター・小学校などの公共施設の整備にあたり、PFIの導入実績を有していた。その経験から、運営・施設整備に際しての創意工夫や、施設のサービス向上を企図し、本施設もPFIを導入することとなった。
しかし、上記の導入実績がある施設と比較して、図書館・美術館・市民活動支援センターは一般市民を中心に多様な利用者が見込まれる施設であるため、市民の意見・声を反映する必要があった。そのため、公募委員4名を含む市民等22名で組織する東根市公益文化施設整備市民検討委員会を設置した。検討委員会では、市民自らが文化を創造できるまちづくりを推進することを目的とし、市民の意見を十分に取り入れながら、望ましい文化施設の機能やサービス、運営の在り方などについて検討を行った。
また整備時には、庁内に「プロジェクト推進課」を新設することで事業推進を専門的に担う人材を確保したほか、先進事例を視察するなどしてノウハウ不足を補うことで、円滑に事業を推進させた。
 

施設全景       
(写真:施設全景)
 

民間事業者の自由な提案によるサービス向上

まなびあテラスの大きな特徴として、業務効率化・サービス向上のための工夫が図書館の随所に見られることが挙げられる。例として、予約した本を無人で受け取れるIC予約本受取り棚や、電子書籍の閲覧が可能な電子図書館サービス、および地域映像アーカイブシステムなどを提供している。特に図書館の機能について、貸出、返却、予約が自動化され、受付も少人数で対応可能となり、レファレンスサービスや図書の整理といった業務に専念することができる。こうした先進的なサービスは、図書館を管理する民間事業者の提案により採用したものである。民間事業者による創意工夫ある提案によりサービス向上が見込めることも、PFI導入の大きなメリットである。

IC予約棚      
(写真:IC予約棚)
 

地域への貢献‐市民活動の場の提供、地元雇用創出

まなびあテラスは、行政側から社会教育講座等のサービスやさまざまな設備・機能を提供する一方通行だけの施設ではなく、地域における交流や発表の場ともなることで、利用者である住民自身もまたその担い手となっていることが大きな特徴である。
その1つの側面は、市民活動の場の提供である。単に市民活動を実施するための場所を貸し出しているだけでなく、市民活動に関する相談や支援、情報の発信、団体同士の情報交換や交流の場の提供を行っている。また、プリント工房を利用しチラシ等の印刷物を作成したり、ギャラリーで作成した成果物を展示したりすることも可能である。館内にはさまざまな市民活動のチラシやポスターが掲載されており、まなびあテラスを中心として盛んに市民活動が行われていることが窺える。また、美術館(市民ギャラリー)は、市内外を問わず、希望者が作品を展示することができ、市民の芸術・文化活動の拠点として機能している。
 

市民活動のチラシ         
(写真:市民活動のチラシ)
       
市民活動スペース         
(写真:市民活動スペース)
       

もう1つの側面は、地域経済への配慮である。先述の通り、本施設でSPCに協力する企業の多くは地元企業である。また、図書館のスタッフや、カフェの店員などに多くの地域住民を雇用することで、地元の雇用創出効果も有している。そうして地域の事情に明るい地元の人材が現場を担うことできめ細かいサービスが可能になるほか、PFI事業を構成する地域外の企業からノウハウを吸収することによる、人材育成効果も期待できる。
このように、単に施設整備だけを目的とするのではなく、地域住民に対して施設の整備効果を持続的に還元することまでをゴールとして見据えていたことこそが、東根市のPFI事業の成功の秘訣といえるだろう。

地元企業の参画スキーム       
(写真:地元企業の参画スキーム)

本事例の詳細は、こちらをご覧ください。

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